企業はデザイン投資の効果を実感している
2025.6.19 (最終更新:2025.6.19)

企業のデザイン投資やデザイナーの働き方のトレンドを調査している「ReDesigner Design Data Book」。
経営など企業の意思決定にデザイナーの視点を取り入れる企業が経年で増加しており、ビジネスシーンでデザイナーが担う役割への期待が高まっている調査結果が出ています。
このような結果は弊社にとってもとても嬉しく思い、ますますデザイン視点が注目されるんじゃないでしょうか。
1.デザイン重視の姿勢へ企業が変化
Q1の「デザイン投資に対して効果を感じていますか」に対し、19年は57%だったが次第に増加。22年は90%に達したが、24年は86%だった。22年と比べて4ポイント下がったが、依然として高い数字を保っている。

Q2で「デザイン組織への投資に効果を感じている点」を聞いた。すると「プロダクトの品質向上」が19%とトップで、以下「顧客満足度の向上」が15%、「ブランディングの向上」が15%と上位を占めています。下位の回答となったが「売り上げ増大」も11%あり、「プロダクトの品質向上」から「売り上げ増大」まで様々な側面でデザインへの投資効果を実感している、と同リポートは分析している。

Q3では「デザイン組織はどこに所属しているか」を聞いた。例えば「事業部」や「経営直下」、デザイン専門部門として「デザインセンター」などの選択肢を用意したところ、22年は「事業部」「経営直下」「デザインセンター」の順だったが、24年は「事業部」、次いで「デザインセンター」となった。22年は20%だった「デザインセンター」が、24年は25%と増加している。デザインの重要性を認識した企業が組織変革を進め、独立したデザイン部門を備えようと取り組んでいることが分かる。

2.デジタル時代のグラフィックに注目
Q4で「社内に所属するデザイナーの職種」を聞いた。「UI(ユーザーインターフェース)デザイナー」「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナー」「グラフィックデザイナー」が、それぞれ14%と上位を占める。これらに次いで、デジタルサービスなどのデザインに携わる「デジタルプロダクトデザイナー」が13%となった。22年と比べ、グラフィックデザイナーの割合がUIデザイナー、UXデザイナーと同等まで増加した。デジタル化が進み、デザイナーの役割が見直されているようだ。

Q5で「デザイナーに求める役割」を聞いた。「ユーザーの声をプロダクトに反映していきたい」が18%、「機能やコンセプトの整理」が17%、「プロダクトの課題抽出」が16%、「ブランドをつくっていきたい/強化していきたい」が15%と上位に並ぶ。22年に引き続き、「ユーザーの声をプロダクトに反映していきたい」「機能やコンセプトの整理」が強く期待されている。

Q6で「デザイナーは事業のどの段階から参画しているか」について聞いた。「体験設計(UXデザイン)」「要件定義」「UIデザイン」が、それぞれ14%と最多。以下、「ビジュアルデザイン」が13%、「ブランディング」が12%、「事業戦略・プロダクト戦略」が11%だった。「事業戦略・プロダクト戦略」といった戦略部分から「ビジュアルデザイン」といった意匠部分まで、参画する業務は幅広い。

3.採用より教育や定着が課題に
Q7で「社内にCDO/CCO/CXOは所属しているか」を聞いた。CDOなどはデザイン部門長というより、役員クラスとして企業のデザインを担当する。こうした「デザインエグゼクティブ」を設置しているかどうかは、デザイン経営に取り組んでいるかどうかの目安になる。24年の調査では設置している企業が25%になり、22年の21%から4ポイント増加した。デザインを経営戦略として扱う企業が多くなってきた。

今回の図にはないが、デザインエグゼクティブに年収1000万円以上を支払う意向がある企業は22年の72%から24年は89%と大幅に増加しているという。デザイン人材の年収も、デザインの価値を示す一例といえそうだ。
Q8で「直近採用したいデザイナーの職種」を聞いた。最も多いのは「UIデザイナー」が18%、次いで「デジタルプロダクトデザイナー」が16%だった。22年と比べ、デジタルプロダクトデザイナーのニーズが上昇している。

Q9で「デザイン人材の採用における課題」を聞いた。「デザイナーの母集団形成に引き続き苦労する企業が多い」が53%で最多だった。母集団形成とは、自社ニーズにマッチした質の高い人材をいかに集めるかということ。採用担当者にとって、常に課題になっている点だろう。次いで「給与が自社レンジと合わない」が16%、「採用後にパフォーマンスを発揮できない」が13%と続いた。注目は、「採用後にパフォーマンスを発揮できない」が22年の7%から24年は13%に増えたこと。採用したデザイナーの教育が課題として大きくなっている。

Q10で「社内でデザイナー独自の評価システムを取り入れていますか」を聞いた。「はい」が45%、「いいえ」が55%だった。22年は「はい」が23%だったので、デザイナーの評価を強化しようと企業が努力している様子が分かる。

Q11で「今後社内のデザイン組織への投資額は何倍に増やす予定ですか」を聞いた。「現状維持」が70%、「2~5倍」が24%、「5倍以上」も3%あった。デザイン組織への投資額とは、大半が人材に対する投資といえる。投資額を現状維持するという回答の背景には、デザインの力を理解していても、デザイナーの採用や教育、評価といった部分に悩む企業の姿が垣間見える。

Q12で「デザイン組織への投資を阻害する要因は」を聞くと、「人材を採用できない」が30%、「デザイン投資への理解を得づらい」が19%、「社内で人材育成できない」が16%と続いた。見逃せない点は、22年は8%だった「デザイン人材が社外へ流出」が24年は12%に増加していること。「人材確保だけではなく、育成と定着にも課題がある」と同リポートは見ている。

4.デザインに向き合う姿勢が問われる
今回の調査を見ると、経営におけるデザインの重要性は、次第に認知されてきたようだ。デザインに対する投資の満足度は高まり、デザイン組織を強化しようとする動きも顕著になってきた。
しかしデザインが強く求められるようになると、改めてデザイナーの採用、育成、評価といった部分が大事になってくる。ここを怠るとデザイナーと企業のミスマッチが起こり、貴重な人材が外部に流出しかねない。デザイナーの数を増やすだけが、デザイン経営ではない。企業は自社をどう変えたいのか。そのためには、どんなデザイナーを求めるのか。デザイン経営の成否は、企業の姿勢にかかっていることが、今回の調査で明確になった。

TOKYO Office
03-6869-1630受付時間 平日 10:00-18:00
OSAKA Office
06-4397-3580受付時間 平日 10:00-18:00
- トップ
- ブランディングについて
- ブランディング
- 企業はデザイン投資の効果を実感している