佐賀の豆腐店、3代目のリブランディングで大成功
2025.7.4 (最終更新:2025.7.4)

マーケットの縮小が続く豆腐業界。そんな状況の中、佐賀県の豆腐会社3代目社長が考案したリブランディングで業績がV字回復。成功の要因は何なのか?どのようにリブランディングを行なったかを紹介します。
目次
1. 豆腐業界の市場
豆腐業界を見ると、豆腐店は価格競争の波にのまれ廃業が加速している。豆腐はもともと保存期間が短いため、かつては地元に根ざした製造小売りの小さな店舗が多数存在していた。
製造技術の発達により賞味期限が伸びるだけでなく、物流の発達と小売りチェーン店の台頭が相まって、スーパーマーケットなどに商品を卸すBtoBtoCのビジネス形態が主流になった。この形態が、多くの豆腐店が廃業し業界全体が縮小していく引き金となった。豆腐店には価格決定権がない中で、圧倒的な販売力を誇る小売りチェーン店に販路を頼らざるを得ないという、小売り有利のゆがんだ構図ができていった。小売店との取引を継続しようと、豆腐店同士の価格競争が激化。もともと安い豆腐の単価はさらに下がり、薄利多売に耐え切れなくなった店が次々に廃業というカタチになった。佐賀の豆腐店も廃業の危機にあった。この状況にストップをかけ、この10年で売上30%増にまで好転させたのが、3代目社長です。卸売以外に、EC事業で直販の販路を確立することで価格決定権を取り戻し、利益率を大幅に上げた。さらにブランドの世界観を体験できる店舗をオープンし、ここでの集客も経営の柱となっている。
2. 小売りに頼らない直販を開拓
廃業危機からの脱却を目指した3代目社長は、BtoBtoC事業から BtoC事業へ変化させていきました。2代目社長から始めていた通販事業を強化し軌道に乗せ、小売店を介さない直販を拡大しようと試みた。この販路拡大が的中し、売上構成の幅が広がりました。 しかしBtoC事業を軌道に乗せるまでの道のりは、決して簡単ではなかった。小売店を介さないということは、数ある商品の中から生活者に選んでもらう必要がある。事業の本格着手に当たり、ブランドが提供する価値を見直すという大幅なリブランディングを敢行。
まずは商品そのものの刷新から取り組みました。豆腐は、シンプルな商品で差別化が難しい。そうした中で目を付けたのが佐賀県に根付く豆腐文化。日本有数の大豆の産地である佐賀平野では、地域によって様々な食べ方で豆腐が食されてきたという歴史があります。会社は嬉野温泉近くにあり、嬉野温泉名物の「温泉湯豆腐」を看板商品にした。佐賀の多様な豆腐文化という地域性を差別化のポイントとすることで、「ここでしか味わえない」という価値にした。販売をスタートすると類似商品を販売してくる企業もあった。しかし “佐賀県の”という地域に根付いたバックグラウンドがないブランドは成長していなかった。このことで、地域性は大きな参入障壁になると気付いたという。 「ここでしか味わえない」価値は、新規顧客を呼び込むものでもあった。店舗を目指して観光客が来るようになった。また特別感から“贈答用”としても選ばれるようになり、商品の単価アップにつながった。


3. 「豆腐屋にだけはなりたくない」からこそ目指す世界
EC販売・店舗販売で売上を順調に伸ばしいく中、さらに買いたたかれない強いブランドをつくろうとしました。リブランディングの軸となったのは、「豆腐屋の地位を向上させたい」という思い。これまでの豆腐屋は朝は早く、湿気や揚げ油で暑い室内で商品を作っても利益は少ないイメージが強く、「豆腐屋にだけはなりたくい」この思いも非常に強かったと思います。これまでの豆腐店のイメージを払拭し、働く人が誇りを持ち、子どもがなりたいと思える職業にしたい。こうした3代目社長の思いが軸となり、「佐賀県で育まれた豆腐文化とクオリティーの高い上質な豆腐を、適正な価格で届けること」がブランドの方針となった。
4. 世界観を体験できる「場」をつくる。しかし社内外からは反対意見ばかり・・・
新しい豆腐店像を伝えるには、ブランドの世界観を体験できる“場”が必要だと考えた。実店舗の開店を決意し、温泉湯豆腐の本場である佐賀県嬉野市に計画を立てました。しかし、実店舗開店の構想を始めたころは飲食事業は未経験。そんな中、土地の購入費だけで1億数千万円かかるチャレンジに対し、社内外からは反対意見ばかり・・・。しかし時間をかけ何とか嬉野店がオープン。
メインは温泉湯豆腐を楽しんだ後、豆腐が溶け出した鍋で鍋料理を味わい、最後に雑炊で締めるというコース仕立ての「温泉湯豆腐定食」。豆腐をコース仕立てで味わうという珍しさが注目され、メディアに取り上げられるようになり、人が人を呼び、しっかり集客できるようになった。順調でも3代目社長は「そもそも店舗で利益を出そうとは思っていない」と言う。 「通販の新規顧客を獲得するための“入り口”として店舗を運営するイメージ。温泉湯豆腐は全国的には知名度が低いため、普通の湯豆腐と何が違うかを知ってもらいにくい。店舗に来て食べてもらうことで、まずは商品の良さを知り、通販を利用するきっかけにしてもらいたい」という思い。つまり、実店舗はブランドの世界観を伝える場であり、新規顧客との接点となる重要な広告塔と考えているのが特徴です。
また3代目社長が実現したい世界観は、ブランドに関係する人がゆったりと居心地良く過ごせるもの。この世界観を具現化するための店舗であり、BtoCへの切り替えも世界観を実現するための手段と言えるんじゃないでしょうか。
5. 同梱物からロイヤルティーを高める
現在は店舗と電話注文に加え、楽天市場と自社ECサイトの2つのプラットフォームをメインに商品を販売。楽天市場では父の日や母の日といったイベント時によく売れる傾向がある。自社ECでは、誕生日やお礼の品といった、通常時のギフト需要があるという。楽天市場が見込み顧客との接点だとすると、自社ECは見込み客からファンになったリピーターに利用されている。
通販では、過去2年以内に購入した人に年2回、商品の案内などを記載した冊子を送付。楽天市場で購入した顧客に、自社ECも活用してもらえれば、自然とロイヤルティーを高められる。このように顧客との継続的なコミュニケーションを心がけている。また販売する商品の見直しも行い、佐賀の地域性を打ち出せる商品に注目。価格訴求の商品はつくらないと決め、豆腐店で必ず売っているような定番アイテムも絞り込み、商品を集約した。商品が多いと生産体制も煩雑になり、強い商品だけに絞ることで生産性を上げることにも繋がります。
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